コース
先付(八寸)
扇形の黒い皿にガラスの器と鬼灯を並べた、見るからに夏の八寸。
射水産の黒大豆枝豆、富山ブラック。小粒なのに味が非常に濃い。豆そのものの甘さと香りが、粒の小ささと釣り合っていない。万願寺とうがらしはシャキシャキとした食感で、濃い豆の後に軽さが入る。
バイ貝と冬瓜のお椀
澄んだ出汁に淡い緑の冬瓜とバイ貝。柑橘の皮がひと筋。
鰹節を直前に削っている出汁で、香りがはっきり立つ。バイ貝は柔らかく、噛むと旨味が豊かに出る。冬瓜は出汁を吸って、椀全体が涼しい方向でまとまっている。
キジエビとアラのお造り
キジエビとアラ。エビは頭付きのまま、ガラスの器に盛られている。
身はプリプリで、味はまろやか。頭のほうは甲殻類特有の風味が広がって、蟹のような濃厚さになる。一尾で二つの味がある。アラは歯ごたえがあって、噛んだ後から旨みが来る。
神通川の天然鮎の炭火焼き
神通川の天然鮎。緑の角皿に二尾、泳ぐような形で盛られている。
炭火でじっくり焼いてあるので、皮はパリパリで身はふっくらしている。味は優しくて、自然な甘さがある。苦味は控えめで、全体のバランスがいい。
この日いちばんよかった1皿。
鰻の蒲焼きフライと卵黄の天ぷら オクラ
鰻の蒲焼きをフライにして、上に卵黄の天ぷらを重ねてある。
蒲焼フライは濃厚で、そこに卵黄が乗るとさらに濃くなりそうなものだが、実際には絶妙に噛み合う。隠し味の山椒の身が入っていて、これがキリッと締める。オクラは控えめだが、全体の美味しさをきちんと引き立てている。
鱧と山芋のすり流し
ガラスの鉢に白いすり流し。鱧ととうもろこしの粒が浮かんでいる。
鱧の優しい甘みと山芋のとろろの相性がいい。とうもろこしの甘みが良いアクセントになり、酢橘のジュレが全体をさっぱりと仕上げる。
焼きとうもろこしご飯
土鍋の表面が、焼き目のついたとうもろこしで完全に覆われている。ひげまで載っている。
バターが入っていて、焼きとうもろこしとの相性が抜群。ご飯の甘みととうもろこしの甘みが同じ方向で重なって、非常に豊かな風味になる。香の物と味噌汁が付く。
鮎と並んで、この日いちばんよかった1皿。
高岡ゆうかメロン 射水あかつき桃 水羊羹
青いガラスの鉢にメロンと桃。隣に水羊羹。
高岡のゆうかメロンと射水のあかつき桃。どちらもみずみずしく、自然な甘さが引き立っている。水羊羹はさっぱりしていて、最後まで爽やかなまま終わる。
まとめ
8品ぜんぶが富山のものだった。射水の黒大豆枝豆、神通川の天然鮎、高岡のゆうかメロン、射水のあかつき桃。産地が県内で完結していて、しかもそれぞれ地名まで分かっている。
この日いちばんよかったのは、神通川の天然鮎の炭火焼きと、焼きとうもろこしご飯の二つ。鮎は皮がパリパリで身がふっくら、苦味を抑えて自然な甘さを出してくる焼き方だった。とうもろこしご飯は土鍋の表面が焼き目のついた粒で埋まっていて、バターと合わせた甘みがご飯の甘みと重なる。派手な仕立てではないのに、どちらも記憶に残る。
味の設計は全体に涼しいほうへ寄せてある。冬瓜の椀、酢橘のジュレ、最後の水羊羹。濃いものは鰻の蒲焼フライくらいで、それも山椒で締めてくる。器も扇形の皿、ガラス、青いガラスの鉢と、夏の見え方で通していた。
夏に富山へ行くなら、鮎ととうもろこしが重なるこの時期に。次は鮎が落ち鮎になる秋に来てみたい。