5月の昼、利賀の L’évo へ。

この日はペアリングをノンアルコールで。山の草も茶も果物もこの土地のもので、皿に合わせて替わっていく。

コース

01

Prologue

黒い皿に並んだ四つの小菓子状の一口。ピンクのメレンゲ、緑の揚げ球、グジェール、白い身を載せた緑のせんべい

薪火の餅米のせんべいの上に白海老、黒部のヤギのチーズと酒粕を練り込んだグジェール、赤ビーツのピンクのメレンゲにL'évo鶏のレバー、甘鯛とジャガイモの揚げもの、串のまま手渡しのこしあぶら。

せんべいは薪火の餅米で、薪と餅米の香ばしい香りと、エビの甘みが混ざり合う。ビーツはほのかに香る程度で、後にはレバーの上品な味が残る。苦味も甘味も多少だけで、素材の旨みが残る。

細い串に刺さったこしあぶらの揚げもの。杉の葉を敷いた黒い器の上
串のまま手渡されるこしあぶら
02

水蛸、大葉のソースとジャガイモの泡

薄く重ねた水蛸に穂じそと花を散らし、キャビアとジャガイモの泡を添えた皿

薄く削いだ水蛸を重ねたもの、吸盤、穂じそと花、大葉のソース、梅のピューレ、ジャガイモの泡、フランスのキャビア。

タコは食感が際立って、味のほうは控えめ。そこに大葉のソースがよく合う。大葉自体が優しい味なので、タコを覆わずに引き立てる。

03

鯵とウド、パイ生地

食材鯵独活

パイ生地の上に並べた鯵の切り身。ウドの細切りとディルが載る

パイ生地、薄く切った鯵、ディル、細く切ったウド、クローバーとディルのビネグレット、オリーブのマリネ。

ディルとオリーブがよく合い、そこにパイ生地も合わさる。抜群なのは鯵とウドの組み合わせで、ビネガーはほんのり効く程度に抑えてある。

04

月ノ輪熊、あざみとこごみ

赤い器に盛られた、緑のペーストをまとった熊肉とこごみ

熟成させてから薪火で焼いた月ノ輪熊、あざみのペーストとこごみ、アズキナ、熊のコンソメとはちみつのジュレ。

脂っこくないのに柔らかく、優しい味。薪で低温調理したような火の入り方かもしれない。山菜は肉を相殺するために置かれているのではなくて、こごみもアズキナもそれぞれ美味しくて、素晴らしい。

専属の猟師が獲ったもの。

05

ホタルイカの天ぷら、ホワイトアスパラ

木の板に載ったホタルイカの天ぷら。松葉状の緑とコーヒー豆が散る

ホタルイカとホワイトアスパラの天ぷら、チコリとコーヒー豆、ジュニパーベリー、天汁のアスパラのスープ。

ホタルイカの旨みがすごい。そこをホワイトアスパラが抑える。アスパラも十分に自然の甘さがあって、コーヒー豆がいい仕事をしている。そして天汁がすごすぎる。つけるとホタルイカに丸みが出て、ホワイトアスパラの甘味が引き立つ。

06

アズマヒキガエル、いたどりと山椒

黒い皿に並んだアズマヒキガエルの三品。骨付きのソテー、衣をつけたフライ、山椒焼きと山菜

三通りにしたアズマヒキガエルの腿、骨付きのままソテーしたもの、衣をつけて揚げたもの、山椒焼き、いたどりとゆきざさ、小松菜とカエルのジュレ。

身は柔らかい。フライはかなり芳醇で、弾力があるぶん噛むほど味が出てくる。山菜はパクチー的な風味で、山椒は香ばしい。

07

大門素麺、黒部のチーズと蕗のとうのオイル

食材大門素麺ヤギのチーズ蕗のとう

産地大門素麺富山・ヤギのチーズ富山 黒部

黒い器に注がれた白いスープの素麺。緑のオイルが渦を描く

大門素麺、スープ、黒部のチーズと蕗のとうのオイル。

麺はアルデンテで、ちょうど良い。やはりスープが抜群で、チーズの旨みと蕗のとうの苦い香りが混ざり合う。

08

L'évo鶏、熊の脂とこしあぶらの詰め物

黒い皿に置かれた、脚のかたちのまま焼いたL'évo鶏とオレンジ色のソース

脚のかたちのまま焼いたL'évo鶏、熊の脂で炊いた油とこしあぶら、利賀のどぶろくの詰め物、真ん中のマスタード。

皮は照りが出るまで焼き締まっていて、骨を持って齧る。獣の脂と山菜と村の酒が、鶏の中で一つになっている。色々な旨みの融合で、うますぎる。

09

桜鱒の低温調理、山の草と南砺のグリーンアスパラ

大量の青い葉に覆われた皿。葉の間から桜鱒とアスパラがのぞく

低温調理した桜鱒、天然のハーブ、クレソン、カラスノエンドウ、南砺市のグリーンアスパラ、発酵エキス。

火はかなり低温で、鱒は新鮮な味。というより、この皿はハーブがメインだと思う。鱒は脂っこくないぶん味そのものはしっかりあるので、草をこれだけ盛っても負けない。

10

猪の薪火焼き、カタクリの花

灰色の皿に置かれた猪のスライスと、緑の葉と茎、黒いソース

熟成させて薪で焼いた猪、山椒のサラダ、ジェノベーゼのソース、カタクリの花、ヤングコーン、ベリーリーフ。

猪は柔らかくうまい。全然ジビエじゃない芳醇な味。それでいて、この皿でいちばん驚いたのはカタクリだった。甘くて、ほうれん草のような旨みがすごい。猪が頭から消えるほど。

専属の猟師が獲ったもの。

11

よつぼし苺とトマトのスープ、ミルクのアイス

すりガラスの器に入った赤い苺のスープと、白く砕けたミルクのアイス

潰したよつぼし苺、トマトと苺のスープ、ミルクを液体窒素でアイスにして崩したもの。

苺は甘すぎず、すっきりさもある。美味しい苺。ミルクのほうも甘すぎないので、よく合う。

12

黒文字

円いパイの上に黒文字の新芽とパウダーを散らした菓子

黒文字の花と新芽をのせたキャラメル、黒文字の香りを移した液体窒素のパウダーとカタラーナ。

一皿の中で黒文字の色々な味が出てくる。キャラメルは控えめで、上品で自然な甘み。

この店の締めの定番。

13

小菓子

木箱に並んだ小菓子と、黒いカップのコーヒー

棒茶のムースに金箔、エゴマのフィナンシェ、桑の茶のシューアイス、青りんごのタルト、生キャラメル、フランボワーズと木苺のミルク、コーヒー。

棒茶、桑の茶、エゴマと、菓子になっても茶と山のものの味で続く。

まとめ

蛙と熊と猪が同じ日に並んで、その間にずっと山菜が入り続ける。利賀のL’évoで、5月の昼。

印象に残ったのは熊だった。熟成させて薪火で焼いた肉が、脂を感じさせずに柔らかい。あざみとこごみとアズキナは付け合わせではなく、皿の半分を担っていた。桜鱒に至っては魚が草に埋まっていて、あれはもうハーブの皿だった。猪の横のカタクリも、主役を忘れさせるほどだった。

もう一つ忘れられないのが、ホタルイカの天ぷらの天汁。アスパラのスープで作ってあって、天ぷらの汁でここまでやるのかと思った。

飲みものは全部ノンアルコールで通した。黒文字とキハダの炭酸に始まって、滑川の緑茶、五箇山のカワラケツメイ、呉羽の紅茶、加賀棒茶、高岡の国吉のりんご。土地の草と茶と果物がそのまま一杯ずつになっているので、料理と同じところから来ている。最後の菓子が黒文字なので、最初の一杯と同じ香りで終わる。

5月は山菜と蛙の季節で、こしあぶらもいたどりもゆきざさもカタクリも一度に出てくる。ホタルイカとホワイトアスパラに間に合うのもこの時期。次は夏に来て、同じ熊が季節を変えてどう出てくるか見てみたい。