5月の夜、金沢・片町の鮨 いくたへ。つまみが6品、握りが10貫、あいだに手巻きが1つ、締めにとろたく巻。日本酒はグラスで6杯。
コース
鯛
薄くそいで重ねた鯛の身、紫の花穂紫蘇、たれ、わさび。
薄く引いてあるぶん、たれの塩気と花穂紫蘇の香りが、身とそのまま混ざり合う。
カラスミ餅
唐墨の丸い薄切り、折り重ねた白い餅。
餅が淡白なぶん、唐墨の塩気と旨みだけが残る。
マハタ 金時草
薄く引いたマハタの身、半分だけ掛けた黄色いソース、茗荷の千切り、金時草。
淡白な身と、ソースのコクと茗荷の辛みが混ざり合う。
毛蟹
ほぐして味噌で和えた毛蟹の身、大根とラディッシュの千切り。
ほぐした身に蟹味噌のコクが絡む。
飯蛸 そら豆
卵の詰まった頭を割った飯蛸と足、そら豆を二粒。
頭の卵がほろほろ崩れて、そら豆の甘みが後から来る。
ハタハタと万願寺唐辛子の焼き
皮から焼いたハタハタを二枚、焼いた万願寺唐辛子。
皮を焼いたハタハタの脂に、万願寺の甘さが挟まる。この夜の最強はこれだった。
アラ
皮際を残したアラ。
噛むほど旨みが出てくる。
アオリイカ
細かく包丁を入れたアオリイカ、ツメを一筋。
切り目のぶんねっとりが強く出て、青い香りが後ろから来る。
北海道のサクラマス
北海道のサクラマスの身を一枚。
脂の乗った身が、シャリの上でほどける。
ガスエビの炙り
数尾を並べて炙り焼き目を入れたガスエビを一貫。
炙ったぶん甘みが際立って、香ばしさが後に残る。
能登の鮪
能登の鮪を一貫。
赤身と脂の境あたりで、酸と脂が一緒に来る。
鰺
皮を残した鰺、シャリのあいだに挟んだ刻んだ葱。
青魚の脂を、葱の香りが引き締める。
北海道の鮪 大トロ
北海道の鮪の大トロを一貫。
口に入れたところからほどけていく。
能登のとり貝の炙り
炙った能登のとり貝の身を一貫。
炙ったぶん、とり貝の甘みと磯の香りが立つ。
天然ものではないが、とにかく大きい。
雲丹
海苔で巻いた軍艦に雲丹の粒。
海苔の香りと雲丹の甘さが混ざり合う。
とり貝のヒモときゅうりの手巻き
海苔に巻いて手渡しで来るとり貝のヒモときゅうり。
ヒモの歯ごたえときゅうりのみずみずしさが、海苔の中で一緒になる。
さっきの一貫のヒモが、ここに回ってくる。
黒むつの炙り
鱗の側を焼き付けて炙った黒むつ。
焼いた皮の下から、脂の乗った白身が来る。
とろたく巻
刻んだトロに沢庵と青みを巻き込んだとろたく巻を六切れ。
トロの脂を、沢庵の歯ごたえと酸が受け止める。
まとめ
つまみが6品、そこから握りが10貫、あいだに手巻きが1つ、締めにとろたく巻。金沢・片町の鮨 いくたで5月の夜。
いちばんはハタハタと万願寺唐辛子の焼きだった。皮を焼いたハタハタが二枚、そのあいだに焼いた万願寺が挟まっているだけで、この夜の最強。
能登のものが、形を変えて何度も出てくる。とり貝は天然ものではないが大きくて、炙って一貫になり、そのヒモがあとから手巻きで戻ってくる。鮪も能登。金時草はマハタの下に敷かれていた。遠くから来たのは北海道のサクラマスと大トロの二貫だけで、あとは日本海のまわりで組んである。
日本酒はグラスで6杯。雪雲で始まり、能登の吉田蔵 # 谷泉、珠洲の宗玄と続いて、締めは花邑の雄町だった。
毛蟹とそら豆と飯蛸が同じ晩に並ぶのは5月のあいだで、この夜はその真ん中だった。次は夏の魚に替わったころ、とり貝がまだ出ているうちに。