コース
八寸
曲げわっぱに羊歯と松葉、蓋物にひもとながらも、柔らかく炊いたタコ、ちしゃとう、芽の付いたくわい、角の器に温泉卵とスモークサーモン、たたきごぼうをクリームチーズで巻いたもの、南砺市のあんぽ柿。
タコは柔らかい。五味も五法も揃っていて、一つ取るごとに味が替わる。
煮物椀 蛤しんじょう
蛤のしんじょう、若布とうぐいす菜、金箔と三つ葉。
微かな海の香りと出汁の味が、薄く混ざり合う。
ズワイガニの刺し
殻を付けたまま氷締めにした脚の身、おろし生姜と生姜醤油。
口に入れるととろけて、うまい。
お造り 富山湾のめじまぐろ
富山湾のめじまぐろの中トロ、大トロ、赤身、山葵醤油、富山産の辛味大根の卸醤油。
かみごたえがあって肉厚。新鮮さと赤身の旨みのバランスがいい。
唐墨餅
満寿泉の貴醸酒に使う古代米をついて炭火で焼き上げた餅、自家製の唐墨、海苔。
焼いた餅の香ばしさと唐墨の塩気と乾いた旨みが混ざり合い、海苔が全体をまとめる。
甲箱の醤油漬けと銀シャリ
そのまま醤油ダレに漬け込んだ泳いでいる甲箱、内子と蟹味噌を詰めた甲羅、土鍋で炊いた銀シャリ。
タレを吸った内子の粒と蟹味噌のコクが、銀シャリの上でちょうど良くなる。
焼き蟹
焼いた脚の身と蟹味噌。
炭で炙った身に蟹味噌を絡めると、焼きの香ばしさと味噌のコクが一度に来る。
蒸し蟹
殻を開いた蒸し蟹の脚が一本。
蒸すと甘さが出て、刺身みたいに新鮮で、うまい。
蟹しゃぶ
椀に張った出汁、脚の身、別の鉢に蟹味噌、小鉢にほぐした身、出汁にくぐらせるのと味噌をたっぷり付けるのと二通り。
これが別格だった。出汁をくぐった身と、濃すぎない蟹味噌の旨味が強く混ざり合う。
小松菜の梅肉和え
茹でて出汁に漬け込んだ富山の小松菜、梅肉をひとさじ、絡めながら和える。
出汁を吸った茎の甘みに、梅肉の酸と塩気が筋を通す。
熊うどん
土鍋に土鍋で炊いた熊うどん、熊肉と葱、椀に取り分ける。
熊の脂が澄んだ出汁に溶けて、うどんを持ち上げるたびに甘みが付いてくる。
店のファンが多い一品。
満寿泉プラチナの酒粕アイス
クネルにした満寿泉プラチナの酒粕で作ったアイスをひとつ。
酒粕の香りが後に残って、甘いままでは終わらない。
雪持柑
盆にほうれん草で色を付けたきんとんで包んだ能登大納言あずき、ゆりねの白いそぼろ、黒文字、抹茶。
小豆の甘さは強く出てこず、ゆりねのほくほくが最後に残る。
まとめ
八寸、煮物椀、蟹の刺し、めじまぐろの造り、唐墨餅、甲箱、焼き蟹、蒸し、蟹しゃぶ、小松菜、熊うどん、酒粕アイス、雪持柑で13品。富山の御料理 ふじ居のズワイガニコースで1月の昼、通しの献立ではなく蟹のための特別献立だった。
いちばんは蟹しゃぶだった。出汁にくぐらせた脚の身に、濃すぎない蟹味噌を付けて、旨味だけが残る。この日の蟹は新湊のズワイガニで、刺し、焼き、蒸し、しゃぶと四度出てくる。氷締めの刺しはとろけ、焼きは炭の香りを吸い、蒸しは生に近い甘さで、しゃぶは出汁をまとう。最後は甲羅を炭火に載せて酒を注ぐ。甲箱は泳いでいるものを甲羅ごと醤油ダレに漬け込んだもので、こちらは銀シャリと合わせて食べる。一杯の蟹をこれだけ手を変えて見せてくる店は、そう多くない。
今回も産地が細かい。新湊のズワイガニ、富山湾のめじまぐろ、南砺市のあんぽ柿、富山の小松菜と辛味大根、能登の大納言あずき。上市町白萩地区の酒米まで名前が付く。
酒は満寿泉が皿ごとに替わる。白萩のぬる燗、ありみね、限定大吟醸、土遊野、貴醸酒で造った貴醸酒、R KIMOTO、BO、通、からくち。ありみねは蟹の刺しと蟹しゃぶで二度出てくる。八寸には IWA 5 のアッサンブラージュの5と4を並べて飲み比べ、酒粕アイスにはモーリシャスのダークラム、締めは御抹茶。
同じ献立をもう一度頼むことはできない。それでも戻りたくなるのは、一杯の蟹をここまで割って見せる手つきの方で、次に呼ばれるならほたるいかと白海老の頃だろうか。