手書きの睦月の献立。八寸から雪持柑まで12品
手書きの睦月の献立。八寸から雪持柑まで12品
大皿に積み上げた四杯のズワイガニ
大皿に積み上げたズワイガニ
黒い鉢に一杯のズワイガニ。脚に富山県新湊漁港のタグが付く
脚に付いた富山県新湊漁港のタグ

コース

01

八寸

舟形の器に、蛸、くわい、ちしゃとう、温泉卵、あんぽ柿とたたきごぼうの八寸

曲げわっぱに羊歯と松葉、蓋物にひもとながらも、柔らかく炊いたタコ、ちしゃとう、芽の付いたくわい、角の器に温泉卵とスモークサーモン、たたきごぼうをクリームチーズで巻いたもの、南砺市のあんぽ柿。

タコは柔らかい。五味も五法も揃っていて、一つ取るごとに味が替わる。

02

煮物椀 蛤しんじょう

黒の椀に蛤しんじょう、若布と鶯菜、金箔と三つ葉

蛤のしんじょう、若布とうぐいす菜、金箔と三つ葉。

微かな海の香りと出汁の味が、薄く混ざり合う。

03

ズワイガニの刺し

食材ズワイガニ生姜

産地ズワイガニ富山 新湊

殻を付けたままのズワイガニの脚の刺身と、おろし生姜

殻を付けたまま氷締めにした脚の身、おろし生姜と生姜醤油。

口に入れるととろけて、うまい。

04

お造り 富山湾のめじまぐろ

食材メジマグロわさび辛味大根

産地メジマグロ富山 富山湾・辛味大根富山

緑釉の輪花皿に、めじまぐろの中トロ、大トロ、赤身

富山湾のめじまぐろの中トロ、大トロ、赤身、山葵醤油、富山産の辛味大根の卸醤油。

かみごたえがあって肉厚。新鮮さと赤身の旨みのバランスがいい。

05

唐墨餅

染付の角皿に、唐墨をふりかけた焼き餅と海苔

満寿泉の貴醸酒に使う古代米をついて炭火で焼き上げた餅、自家製の唐墨、海苔。

焼いた餅の香ばしさと唐墨の塩気と乾いた旨みが混ざり合い、海苔が全体をまとめる。

06

甲箱の醤油漬けと銀シャリ

食材香箱蟹米

産地香箱蟹富山

朱の皿に、内子と蟹味噌を詰めた甲箱の甲羅。銀シャリの椀が並ぶ

そのまま醤油ダレに漬け込んだ泳いでいる甲箱、内子と蟹味噌を詰めた甲羅、土鍋で炊いた銀シャリ。

タレを吸った内子の粒と蟹味噌のコクが、銀シャリの上でちょうど良くなる。

土鍋で炊き上がった銀シャリ
土鍋で炊き上がった銀シャリ
07

焼き蟹

食材ズワイガニ

産地ズワイガニ富山 新湊

黒の器に、炭で焼いたズワイガニの身と蟹味噌

焼いた脚の身と蟹味噌。

炭で炙った身に蟹味噌を絡めると、焼きの香ばしさと味噌のコクが一度に来る。

08

蒸し蟹

食材ズワイガニ

産地ズワイガニ富山 新湊

緑釉の葉形の皿に、殻を開いたズワイガニの脚一本

殻を開いた蒸し蟹の脚が一本。

蒸すと甘さが出て、刺身みたいに新鮮で、うまい。

09

蟹しゃぶ

食材ズワイガニ

産地ズワイガニ富山 新湊

染付の椀の出汁に、花のように開いたズワイガニの脚

椀に張った出汁、脚の身、別の鉢に蟹味噌、小鉢にほぐした身、出汁にくぐらせるのと味噌をたっぷり付けるのと二通り。

これが別格だった。出汁をくぐった身と、濃すぎない蟹味噌の旨味が強く混ざり合う。

蟹しゃぶの椀、蟹味噌の鉢、ほぐした蟹身の小鉢が並んだ膳
蟹しゃぶの椀、蟹味噌の鉢、ほぐした蟹身の小鉢が並んだ膳
炭火の網に載せた蟹の甲羅二枚に、杓子で酒を注ぐ
炭火の網に載せた甲羅二枚に、杓子で酒を注ぐ
10

小松菜の梅肉和え

食材小松菜梅

産地小松菜富山

白い輪花皿に、束ねた小松菜と梅肉

茹でて出汁に漬け込んだ富山の小松菜、梅肉をひとさじ、絡めながら和える。

出汁を吸った茎の甘みに、梅肉の酸と塩気が筋を通す。

11

熊うどん

黒の椀に取り分けた熊うどん。熊肉と葱が載る

土鍋に土鍋で炊いた熊うどん、熊肉と葱、椀に取り分ける。

熊の脂が澄んだ出汁に溶けて、うどんを持ち上げるたびに甘みが付いてくる。

土鍋で炊かれている熊うどん
土鍋で炊かれている熊うどん

店のファンが多い一品。

12

満寿泉プラチナの酒粕アイス

食材酒粕

青磁の鉢にクネルにした酒粕アイス

クネルにした満寿泉プラチナの酒粕で作ったアイスをひとつ。

酒粕の香りが後に残って、甘いままでは終わらない。

13

雪持柑

黒の盆に、緑のきんとんに白い百合根を載せた雪持柑と、抹茶茶碗

盆にほうれん草で色を付けたきんとんで包んだ能登大納言あずき、ゆりねの白いそぼろ、黒文字、抹茶。

小豆の甘さは強く出てこず、ゆりねのほくほくが最後に残る。

まとめ

八寸、煮物椀、蟹の刺し、めじまぐろの造り、唐墨餅、甲箱、焼き蟹、蒸し、蟹しゃぶ、小松菜、熊うどん、酒粕アイス、雪持柑で13品。富山の御料理 ふじ居のズワイガニコースで1月の昼、通しの献立ではなく蟹のための特別献立だった。

いちばんは蟹しゃぶだった。出汁にくぐらせた脚の身に、濃すぎない蟹味噌を付けて、旨味だけが残る。この日の蟹は新湊のズワイガニで、刺し、焼き、蒸し、しゃぶと四度出てくる。氷締めの刺しはとろけ、焼きは炭の香りを吸い、蒸しは生に近い甘さで、しゃぶは出汁をまとう。最後は甲羅を炭火に載せて酒を注ぐ。甲箱は泳いでいるものを甲羅ごと醤油ダレに漬け込んだもので、こちらは銀シャリと合わせて食べる。一杯の蟹をこれだけ手を変えて見せてくる店は、そう多くない。

今回も産地が細かい。新湊のズワイガニ、富山湾のめじまぐろ、南砺市のあんぽ柿、富山の小松菜と辛味大根、能登の大納言あずき。上市町白萩地区の酒米まで名前が付く。

酒は満寿泉が皿ごとに替わる。白萩のぬる燗、ありみね、限定大吟醸、土遊野、貴醸酒で造った貴醸酒、R KIMOTO、BO、通、からくち。ありみねは蟹の刺しと蟹しゃぶで二度出てくる。八寸には IWA 5 のアッサンブラージュの5と4を並べて飲み比べ、酒粕アイスにはモーリシャスのダークラム、締めは御抹茶。

同じ献立をもう一度頼むことはできない。それでも戻りたくなるのは、一杯の蟹をここまで割って見せる手つきの方で、次に呼ばれるならほたるいかと白海老の頃だろうか。